聖トマス教会はいいひとわるいひと?

yokkobukko2011-08-25

ライプチヒの朝。昨夜の雷雨が嘘のような晴天。しかももわもわっと蒸し暑い。アイゼンナハもそうだったが、湿気は日本と変わらない気がする。思ったよりも乾燥していない。今日の本番は2時。完全アカペラです。朝一聖トマス教会でリハーサル。トマス教会もいわゆる格式高い教会で、日本からアプローチした際には、そんなどこの馬の骨だかわからん輩にはオルガンは貸せんという話で最初は断られた。しかし3月以降に感触が変わり、このたび災害に遭われたかわいそうな国のひとびとに祭壇前はお貸ししますし、リハーサルもたっぷりやっていいですよ、合唱が終わったら、オルガン演奏もお聞かせしますよ、となった。うーん、上からだなー。まあ学歴ないバッハをさんざん軽んじて、こき使い、冷遇した教会だしなー、そんな感じもまた納得だなー。と思ったら教会守のひと非常に感じよい、善い人、温かに迎えてくれる。

この教会の内陣にはバッハのお墓があって、一輪、一輪、誰かが手向けた花が置かれているんだけど、あろうことかそのバッハのお墓の前、祭壇の階段に立って歌っていいという。教会入口に張り出された今日の催しにちゃんとTOKYOからの合唱団と書いてある。あれ、いいひとたちなの、トマスのひとびと。

しかしこの日、ここでのリハーサルは悲惨だった。電子音叉で音取れず、そのうちに仲間割れはじまり、もう合唱の仲間の心はばらばらだよー。どんより薄曇ったムードでリハーサル終え、隣のバッハ博物館へ。生楽譜など見たのち、メンデルスゾーン博物館へ。マタイ初演のスコアに釘づけ。キャプションがドイツ語でよく読めない。「それよりこれ見て」とバスのK下さんに連れられ、少年時代のメンデルスゾーン肖像画の前へ。金髪巻き毛の王女さまみたいな美少年、だけど、これ見てどうリアクションしろと?K下さん。お庭でバラなどを鑑賞。昼飯はリングに面した一軒家のケラー。本番前なのでビール禁止令出て、みなでソフトドリンク。うーむ、レバーケーゼに合いません。

そそくさと昼食終え、バス乗り込もうとすると、ここで練習するという先生。リング前、バス停には学校帰りの小学生(こっちは新学期はじまっているらしい)まあもう恥とかない。このへんくらいから、もうどこででも歌えるし、ゲリラ合唱、おーよやったろーじゃん、という気分。ざっと全曲入りの練習。やはりうまくいかない曲はいかない。長調短調、入れ替わるたびに間違える。
ええい、ままよ、と教会へ。お昼のいちばん観光客の多い時間。コーディネーターがマイクで演目を紹介し、我々合唱団を呼び込む。神妙な様子のギャラリー。めちゃめちゃ緊張する。ハーモニー合わなければ合うまでやりなおす、という約束で歌いはじめる。微妙にずれてしまった曲もあるが、おおむね良し、という内容で歌いきる。拍手。知らないおじさんおばさんから握手求められ、感想もらう。うれしい。本来そこから静かに退場したいところだが、オルガン聴かせてくれるというから待つ。待つが、待てど暮らせど・・・というやつ。コーディネーター確認したところ、そんな約束はしていない、と言ったか言わないかは知らないが、とにかくオルガン奏者がいないという、もうさっき弾いたから、今日はもう弾かない、とか。たしかにさっきバッハオルガンのほう弾いてたけどね、あれ、どっかの学生だろう。なんなんだー、そっちが聴かせてやるって言ったんじゃん、と外出て、トマス学校前の広場でたむろして文句言ってたら、知らない外国人(ブルゴスから来たという)がぞろぞろやってきて拍手喝さい。歌え歌えとそんな雰囲気。屈託ないおじさんがハミングするのはどうやら17曲目。うーんいい曲だよね、と皆で合唱、おじさん指揮。

めちゃくちゃ楽しいし、いいハーモニーだ。向かいのビルの屋根で工事していたおじさんたちも拍手喝さいしてくれる。アンコールに応えてヨハネ40番、これはちょっと出来悪かったが、やはり拍手。しかし快感!音探しに苦しんだこの数日があったからこその解放感。こんな感じでいつも心から湧き出る感じで歌えたら素晴らしいんだろうな。