サンラザール教会

  
礼拝は行われなかったのか、終わったのか、誰もいない。双眼鏡片手にゆっくりひとつひとつ柱頭を見上げて、ぐるりと教会を回る。あきらかにタンパンと共通するタッチがある。マンガでいうなら網掛けのような模様だ。それと長い数珠玉を帯と帯で挟んでうねる植物の茎。これが丸まって円になると、あの飴に似ている。ピーナッツとあられをニッケ味の白いヌガー地で挟んでのばして金太郎飴みたいに切ったやつ。
にちゃにちゃ歯にくっつくやつ。
これがボーダー装飾として、マリアの袖口や服の裾にも使われている。側廊をゆっくり下り、右側廊をゆっくり上り、アプシスをゆっくり回る。ここは祭壇、内陣のまわりに周歩廊がついている。チャペルをひとつひとつ見て回る。どの柱頭もおもしろい。石に刻まれた場面が語りだしそうで、黙っているので、気になってしかたない。三角形のアララ山のてっぺんに突き刺さったみたいなノアの箱舟は、まるでおうち。鐘がぶらさがった横木を肩に担いだひと、これはなにをしてるんだろう、解説書によれば音楽の授業とあるけど。墜落する魔法使いシモンもおもしろい。一時間ほどいたろうか。ぐるぐるまわったがあれがない。マギの眠り。
正面玄関のタンパンへ。外出ると雨降ったりやんだり。コートのフードかぶり横の庭に出てガーゴイル見上げる。口開けた化け物ちゃんが普通だが、真っ裸でお尻つきだしてる子がいる。うーん、うーん。ま、いっか。
タンパン。わたしなんかが言うのも変ですが、全体の調和の取れ方が見事で、ばかでかいのに繊細なんだ。たとえばモワサックは石の迫力があったけど、そのぶん重量を感じて、目の前で見てるとこっちの頭や身体にのしかかってくる。ここのは、なんだろう、軽やかで、上昇してく感じだ。ヴェズレーともちがう。ヴェズレーよりセンスを感じる。センスというのはきっと語弊ありありなんだが、センスいい!というときのあのセンスなんだ。画というより、文様として完成しつつあるのかな、まだちょっとよくわからない。階段に腰下ろし、双眼鏡でじっくりディテールを見る。