ドノスティアは親爺のまち

少し休んで探索へ。この海は大西洋。ビスケー湾。4キロくらいにわたってつづく長い弓のような浜辺が美しい。砂はこまかくて白い。なんもかんもちがうのに、なぜか江の島を思い出す。江の島ならおいしいものあるにちがいない。となにか直観的に確信する。うむ、まだまだ一日が続いているんだなー。街へ。お昼ご飯を。お兄ちゃんにおしえてもらったバルのひとつへ。なんとなくその店を選んだのは、なにか親爺っぽいから。目の前のガラスケースには獅子唐とトマトがかざってあって、色とりどりのピンチョスが飾ってあるそのへんのバルとちょっと様子がちがう。苦虫噛みつぶしたような親爺さんと愛想の扉が固そうな若者がカウンターの中にいる。生ビール(カーニャ)と獅子唐。そしてトマト、そしてチョリソーを注文。・・・旨い。なにが旨いって塩が旨い。結晶をこそぎおとしたみたいな白い透き通った塩の薄片がトマトにも獅子唐にも。

なんかちょっと涙。このくらいの量でいいんだよ、という昼食になったのがうれしかったの。いつもばかみたいな量が出るから、外国って。半立ちというか、立ち食いだけど、飛行機で死ぬほど座らされてたのでむしろ楽。
ああ、相性いいんだな、この街と思う。岬突端の城塞を散歩して、ぐえーっと疲れて、宿帰って寝る。
花火の開始は10時45分。
少し前に起き出してでかける。街がさわがしい。
  
どう聴いても祭り囃子。みれば、身の丈三メートルくらいありそうな巨大人形が踊りながらパレードしてる。あ、よくブエルタとか、ツールのブルターニュのあたりとかで見るやつだ!近寄ってみると小さい小人もいて革袋でこどもたちをばっちんばっちん叩いている。あれに叩かれると、一年無病息災、とかだろう、きっと。昔お盆に能登半島でみたキリコさんというお祭りを思い出す。(あとでパンフレットで見たらあの人形はキリキスさんというらしい、スは複数かもしれんので、キリキさんなら、かなり似た響きだ)
肌寒く、カーデガン羽織ってでかけだが、浜辺にはそれでも海水浴客がいて、この寒いのに、そして水もかなり冷たいのに楽しげに波と戯れている。わりと遠浅なのか、たくさんの水着のひとびとが波打ち際を歩いている。われわれも裸足になって、とりあえず海の喜びを享受。

夜ごはんもバル、かな。バルはしごできるかな。魚屋通りにある老舗バル。ものすごい人ごみを押し分けてカウンターに取りつく。隣のおばちゃんがチャコリなどを注ぐガラスコップにちょびっとだけ入ったなにかを飲んでいる。それなんですか。これはトゥリート、ビールよ、ただの。とおしえられる。こんなちびっとのビールありですか!と感動。気に入りました。これならちょっとずついろんな店で飲めるな。エビの串刺しなどのピンチョスをニ、三頼んで、次。昼行った親爺さんのバルで昼食べ損ねた牛のチュレータ(あばら骨肉)のステーキ。歯ごたえ半端なく、固いは固いんだけど、味が旨い。なんだろーな、名店ですね。

ちなみにここでチュレータとトゥリートがごっちゃになって、飲み物みっつ来たりして、おもしろかった。こんなの頼んでない、いや、頼んでたわよ、あたしが欲しかったのはとにかくこれじゃない、とか常連さんやら親爺やらとやりとり。例の愛想の出入り口の小さい若者も窓くらい開けてくれたのか、ほんのすこし笑顔。こんくらいの愛想がちょうどいいよなー。親爺も二度来たな、おれは覚えているぜ、というアクション。
店の外は音楽、イギリス音楽とか、なんちゃってラガマフィンとか、パレードとか、どんどん店が混んでくる、祭りか、今日は祭りか。どうも音楽週間なのらしい。
10時45分。日本の花火職人だったら、反省会だろうというような、ぽしゃり花火もありながら、華々しい花火が三十分くらいどっかんどっかんあがるのを突堤で見る。気付くとあたりじゅうが人。

花火終わって、我々はホテルに引き上げたけど、祭りは続く。朝まで。
長い一日だったなー