ぶんげい春秋

yokkobukko2012-02-16

下のお義母さんが読んで読んでと貸してくれた。芥川賞受賞作。田中慎弥「共喰い」。素直におもしろかった。どんどん書けるようになっている。持った筆が自由に操れるようになっているという感じ。いくつかの評にも言及されてたけど、登場する女性たちがおもしろい。いやかっこいい、がちかいかな。恋人も。
「蛹」を気に入っていたお姑さんは、すごく書ける人だと思うけど、具現化された作品を読んでいるとうっ屈してくる、あまり読みたくない、というようなことを言っていた。わたしは、なにかやっぱり美しいものを見たような気がしたし、なおかつすかっとするような爽快感さえ感じてしまった。
円城塔「道化師の蝶」。田中慎弥とこのひとが同じ賞を同じときにとるというのがちぐはぐな感じもするし、いややっぱり同世代作家なんだろうとも思う。相変わらずひねくれているようでめちゃめちゃ中学生チックというか、少年チックな素直な感性の文章だなあ。このひとにただようSFの迷宮の気分というか、ロマン、味わう。このひとの本読んでるときの感覚というのは、下校中に、電車とか、バスとかで、ともだちと延々SFの構想だとか、感想だとかを語りあっている、それを窓の外とか、停留所とか、外からの刺激もうけつつ、入り込んで聴いている、そういうのなんじゃないかな。読んでると、いろんな風景を思い出す。
川上弘美が言うほど難しいことが実現されているのか、ほかの評者がいうほど難解なのか、もはや評のほうが難解という気がする。なんといっても萩尾望都の「銀の三角」、これのラグトーリンが思い浮かんでしかたなかった。萩尾のそれもきっとSF界のなにか流れをくんでいるのだろうから、源流が近いのかもしれない。
着想を現象化しまくる、というか・・・本人が楽しくてしょうがない様子で、形を編みあげる、その作業が、はたから眺めてもいかにも楽しそうで、うらやましいし、共感したい。素直にいいなあと。
で、すごく楽しみましたね、BGSJ(ぶんげいしゅんじゅう)、倉本聰北の国からの続編構想もおもしろかった、でも最後まではおしえてくれない。りっぱなプロの脚本家も、空想好き小学生も中身は同じなのか。