ひきこもり

yokkobukko2011-01-09

B昨日の無理たたって風邪悪化、ってほどでもないけど、養生のため家にひきこもる。ノルウェイの森、読み切る。
十年ぶりくらいに読んだ。前はワタナベにこんなに腹立ったかなあ、と思いだそうとするがもう覚えていない。この男が普通、ごく普通(ごく普通のネイビーブルーのジャケット、とかそういう)と言うたびに、薄暗い気分になる。スクラッチされる。このひとの心がだれかに同情するたびにスクラッチ。しょうがないそんなやつなんだ、とやるせなく、ごろごろするものを黙って呑みこみ、のみくだす。
しかしつくづく読ませるなあ。あたり前だけど映画はある種の側面でしかないんだ。こぼれおちたものはいろいろあるけど、ハツミさんの価値が大きいかなあ。でもハツミさんの価値は読んでいてもとらえきれないというか、わかるようなわからないような、でもかならず核心なんだけど。
村上春樹新約聖書みたいなふうに語りたいんだろうと思うことよくある。確固とした核心があって、それはすごく具体的なことなんだけど、それを読者にどう伝えるかというと、並行した譬え話で、読者の心を震わせる、そうして似たような感動を引き起こす、消しがたい経験をさせる、ということがしたいんだろうと思う。でもときどき、それ、うまくいってないかもよ、と読者としては思うことあって、譬えがうますぎるとか、美しすぎるとかで、独り立ちしていて、わたしが感動してるのはそっちにかな、と、で、結局どこを見たらよかったんだっけ、と混乱する、つか本来作者が用意したものに戻ってけないときある。わたしのハツミさんはそんな感じだ。
それにしても爽やかで軽やかで(というか、うまく言えないけど、とにかく軽さにまつわるもの)きれいで胸の痛む魅力的な小説だ。そうしてみると最近の村上春樹は溶けだしたコールタールみたいにべったりしているなあ。