久々に映画を見る

yokkobukko2010-11-28

スイートリトルライズ。ライズは嘘のライズ。昨日につづきカップルを考える。夫婦だけでなく、つがいというか、伴侶かな。映画は夫婦の話です。原作は江國香織。結婚して三年か四年経つ夫婦がそれぞれ恋人をつくって恋愛する。大森南朋中谷美紀が夫婦。大森南朋の恋人が池脇千鶴。中谷の恋人役のひとは知らない俳優だった。
冒頭、夫婦の寝室に朝が来て、中谷が起きて、朝の支度をする数分間にわたるシークエンス、ベッドから起きるしぐさひとつ、窓を開ける動作、コーヒーを沸かし、柱時計のねじを巻き、その指先、爪の先まで隙のない無駄のない(たとえば、それはまったく跡形を残さないというような)いつもの儀式を、リラックスしつつ、しかしぎっちり緊張したプロの手つきでこなしていくこのたった数分間のしかし何時間にも思えるほど密度の濃い息詰まるシークエンス、ほとんど映画すべて凝縮されてる。
ちなみに夫ははっきり目を覚ましてるんだけど、目を閉じている。その世界は壊せないよなあ。呼ばれるまでは目を開けられないんだな。
最初、冒頭シーン見ながら、こういうひと(なんというか、刻一刻、隙なく真剣に刻んでいく、ある意味余裕のないひと)いるなあ、と思って、見おわってだいぶたってから、でもわたし、そういうひと好きだなあ、とも思った。好きだから友達になってしまうけど、一言しゃべっては深く自己嫌悪に陥るという、危険なおつきあいになってしまう。いつだってそのひとの世界を補完したい、あるいは邪魔にだけはなりたくないと結構緊張して出した答えが、外れ、というようなことで。
実際、愛されていても身の置き所がない、いたたまれない、大森南朋演じるさとし、誰に感情移入するかというと、わたしにはこのひとだな。愛されていても、そして愛していても、というところが、かなりせつなく、このひとの孤独と、中谷妻の孤独はまったく話が通じないんだなあ。
おもしろいのは、話通じなくても、愛しあえることで、これはかなり興味深い。魂とかでつながってるんだろうか。
なんにせよ、ハタ迷惑な夫婦ですな。下手にモテるところが。
行きがかり上でお姑さんとBと三人で並んで見た。ここまで三人三様か、というくらい登場人物のとらえ方、ひとつの場面に対する解釈、リアクションまったくちがって、鑑賞後の感想のやりとりはかなりおもしろかった。居酒屋トーク。お姑さんは中谷美紀ってことに行きがかり上なってしまった。おかんというポジションで参加でしたしね。三人とも池脇千鶴のビッチぶり、その演技力はすごかったとこれは合意。
映画のあとの監督、脚本家あいての質疑応答も興味深かったな。監督は誠実だった。