オタン駅周辺

オタンはわりかし大きな町だ。中央の役所前広場からまっすぐ十分ほど道を下ると駅前に出る。どこもそうだが国鉄駅前は場末というか、寂れている。この町で地球の歩き方に乗っているホテルはふたつだが、そのうちひとつは駅前にあり、もしここ泊ったら寂しいし、なにより町に遠いよな、と思う。ただそのぶん安い。
窓口向かうとすでに行列ができている。うーむ、悪い予兆だ。ここはパリ方面だけでなく、エタンとかいう方面にも電車がでており、そちらの今日の時刻表が貼り出されている。けっこう欠便でていて、前方に並ぶ客はだいたいそれ目当ての客らしい。なんやかんやもめて代替手段を探している。デジャヴュ。二十分ほど待ってようやく自分の番になり、まずは14:50発のアヴァロン行き電車が出ているか確認。よかった走っている。時刻表通りアヴァロンでパリ行きの電車に接続らしい。切符買う際、アヴァロンから自転車載せる旨と、その回収の話すると、自転車はただだけど(やっぱり!)、その回収は難しいんじゃないかと言われる。時刻表どおりなら十五分あるから、よほどのことがなければ大丈夫だろうと答えるが、「数分だよ、数分」と言われて切符よく見ると、8分しかない。あれ?まあ、がんばります、がんばるしかないですから。スト明けに対してこっちがどれほどやきもきしたか知らぬおじさんは、もう帰るのか、もうブルゴーニュはぜんぶ見たのかと聞いてくる。明日には飛行機ですよ、と答えると、やれやれっ、て顔をする。なんつか、みんなこの地方が自慢なんですね。
    
 無事切符買え、すこしほっとする。出発時刻まで時間あるので、そのへんで食事をと思い、駅前ホテルの食堂に入ってはみるものの、カウンター立ち客がたむろし、なにやらディープな場末感をただよわせており、ちょっと場違いかな、というムードなので、小雨降るなか、中心街へ戻り、役場広場前の混みあったブラッスリーに腰下ろす。わたしは生ビールとステーキとフライドポテトの定食。Bはローストチキンのワンプレート。従業員男ばかりの男ブラッスリー。あんまり流行っていて、注文が錯綜し、誰もが待たされぎみで、カウンター向こうのキッチンではお兄ちゃんたちががっちゃんがっちゃんやりながら肉焼いたり、皿運んだり。「わ、わたし、まだデザート選んでないんですがー」とERのロマノ似のお兄ちゃんを呼びとめると、「○○と××と△△」だめだ憶えられない。「ええと最初のは?」「クリームパイ」「えーと最初のは(なぜかもう一度聞く)」「クリームパイ(淡々と)」「うーん(この間30秒くらい)・・・二番目のは?」「ヌガーアイス」「あ、じゃ、それ」どんなに混雑し、どんなにばたばたしていようと、じっと注文待ってくれてるよね、とB。たしかに。やってきたアイスは甘すぎて、わたしには無理だったが、Bがよろこんで食べてくれた。サンブーカセミフレッドに似ている。コーヒー旨かった。
見ると小雨の中、広場にミニSLが!出発2時、所要時間45分、残念だけど乗れません。広場周辺の町も生き生きと再生している。まるでわれわれが眠りの精だったみたいじゃん。もう聖堂にはさよならしたし、城塞の外にある、ローマ時代の遺跡とか見たかったが、しょうがない。
  なんか自転車がらみで