魔の日

yokkobukko2010-08-14

ヴェズレーの朝、というか早朝というか、前夜の残り、3時、4時から目が覚める。なんとかがんばって6時まで布団にいる。目の前にひらけた小高い山々と広野、ヴェズレーはモルヴァン山地の端っこでもある。夜明けがやってくるが、空じゅうに雲。

最初世界が白んで、それから赤くなる。聖堂の鐘も鳴る。なぜだか数えきれないほどの燕が黒い点になって空じゅうに広がったり集まったりして、飛び交っている。雨が降るのだろうか。それとも旅立ち?朝の礼拝が見れる(聴ける)かもしれない。風呂入ってのんびりして、あったかくしてお散歩に出かける。下で宿のオジサンに会う。朝ごはんは8時からだとか。それが普通だと思う。
朝のヴェズレー、まっすぐ参道を登らず、左にそれて坂下り中世の門を見る。
     
門の外に出ると、城壁が村を囲んでいるのがわかる。その向こうは緑の広野。ブドウ畑もあるし、牧草地もある。どこまでもなだらかに見えるが、昨日走ったのでよくわかる、土地全体に軽いうねりがある。素人の我々の足をすぐに売り切れ状態にさせる勾配だ。でもツールだったらド平坦と呼ばれるコースになるだろう。参道もよかったけど、裏の小道もなかなか楽しい。
どこまでも石の世界だ。
聖堂入ると、やはり礼拝中だった。男子女子の修道僧が祭壇の前に跪いて祈っている。詩編の朗誦、やはりシロスで聴いた抑揚にも似ているが、女子ふたりの声が先導する点がかなりちがう。それにしてもマイク。なぜマイクを通すのだろうか、もったいない。みな背中を向け、すっぽりフードをかぶっているので、身体の揺れも見えないし、最初は歌っていると気付かず、録音かと思った。でも昨夜のコンサートとちがって、これは歌じゃない、言葉だ、と思った。言葉だと眠くならない、言葉は入ってこようとするし、実際入ってくる、意味わからずとも、人の心に、不思議なものです。
宿に戻って朝食。ビュッフェ形式だけど豪華。ハムやチーズがもりだくさん。ヨーグルトもフルーツサラダもある。たっぷり食べて地下にある庭を散歩する。地下といっても、坂道に建っているからそこが地階だ。宿のオジサン(実際、ちょっと色っぽいかっこいい親爺でオジサマのが合うかも)が自慢するだけあってなかなか感じがいい。季節の花が咲いていて、果樹があって、小鳥がたくさん遊びに来ている。
  
そこに停められた我々の自転車をなんだこれっと楽しげに眺めている、どころかハンドルにのっかって、なにかついばんでいる。美味いのか。皮脂でも残ってんのか。
庭の切れめから聖堂が見える。
 
ちょうど麓から丘の頂上を見上げるような角度にあって、いま礼拝が行われていたそこが実際より遠くに見える。庭に面した部屋もある。二階の景観もすばらしいし、次に泊るとしたら、とか変なことを考えてしまう。食堂のトイレ寄って部屋に戻ろうとして迷子になった。迷子になるほど広くないのに恥ずかしい。受付にたまたまいた掃除のおばさんに相談したら、宿帳のコンピュータいじってくれたが、「あれ2012年になっちゃった!戻んないわー!!」みたいな事態になってアワアワしてたらオジサンやってきて、部屋番号忘れた旨説明し、かなり笑われた。