ブルゴーニュ入り

yokkobukko2010-08-13

朝六時、地下の自転車を地上へ移す。そのまま地下食堂で朝食。このホテルは朝食が六時半から、というのがすごい。ビジネスマンが泊るのだろうか。早々に荷物まとめ、七時半にチェックアウト。受付のマダムのネット操作がうまくいかず、カード払い不成功に終わるが、三日後にこのホテルに戻ってくるので、そのときまでのツケということになる。スーツケースは預けていく。
ここからはリュックの旅。自転車にまたがり出発。マダムが玄関先で見送ってくれる。日本旅館の仲居さんのようにお辞儀というのでなく、ちらりと手を振る。いちいち粋だ。いいホテルだった。
昨日シミュレーションしたのに、道まちがえ、ムフタール通り下ってしまう。ちょっとずつ遠回りしながら、セーヌ川へ。シテ島。ママチャリ通勤のおばさんに抜かれる。昨日から気付きはじめたけど、マウンテンバイクってスピード出ないのよね。
ベルシー駅。キヨスクでだめもとでブルゴーニュの地図探すがやはりない。自転車マークの車両。所定の位置に前輪をひっかけるしくみ。8時20分発。ほぼ二時間の旅。終点アヴァロンのひとつ手前のセルミゼルで下車。地図はないが、グーグルマップとストリートビューで何度か道を確認したので大丈夫だろう。ガイドブックによればヴェズレーまでは10キロそこそこしかないし、間違えても修正きくだろう。
11時前、駅前を出発。たしか国道をアヴァロン方面に一キロほど走るとすぐに右に曲がる標識が出るはず。田舎にしては車がよく通る、上り基調の坂道を二キロ、三キロ走ってもVezelayの標識出ず、変だなーと思いながらも坂を上ったり下ったり、アヴァロンまで4キロの標識出て、やはり間違えたと思う。停車している車の運ちゃんに道聞くと、やっぱ来すぎている。運ちゃんの話だと七キロくらい戻ったとこを左に入れという。「いっそアヴァロン回ったほうがいいかな?」と聞くが、ぜったいそれはない、と言う。土地のひとが言うならそうだろう。いま来たみちを戻る。帰りは下り基調でわりと楽、でも心は重い。途中の旅籠レストランでもう一度道を確認。やはり、さっきの運ちゃんの言うとおりだが、話を総合すると、どうも最初、セルミゼルの駅で国道に出たあの道が、ヴェズレーへの道だったようだ。0キロ地点からまちがえてたのかー、とほほ。たしかに戻ってみるとちゃんと「Vezelay」と表示がある。ううう。14キロも余計に走ってしまった。それで一時間。すこし走って街道脇の集落の食堂目に入る。旅籠食堂かー、距離走るのはいやじゃないけど、今日のはちょっとこたえたなあ。このへんで一休みしますか。
中入ると混みあっている。ほぼ満席。みんな同じ料理食べている。おばあちゃんが今日のお薦めはこっちだよ、と店の外の黒板へと導く。つらつら書いてあるけど、ちゃんと読まずに11.80ユーロだけ確認。こんな田舎にしては高いような、と思いつつそれしかないんだろうし、じゃ、それふたつ。ビール飲みたいけど我慢。水がぶ飲み。メニューは、牛蒡サラダみたいなもの→巨大キッシュ→牛肉のソテーとチーズジャガイモと野菜の煮込み→チーズの盛り合わせの皿から好きなだけ→デザート、という、こんな食えっかー!という量だが、どれも素朴でおいしかった。とくにメインは、ふたりぶんの肉が盛られた皿がどん、じゃがいもがどん、やさいがどん、でなんか田舎家の食卓に招かれたような。
客はじいさんばあさん多いが、みな長身で巨漢で、われわれはまるで踊る仔馬亭のホビットさんだった。
マダムのおばあちゃんに「地図(カルト)はないですか?」「メニュー(カルト)はないよ、ワインかい?」「いえ、道路地図(カルトルティエール)は」「だからワインなのかい?」「道の、道のです!!」「ええ?!」横で聞いていた常連の若者がたまりかねて、あいだに入ってくれた。まあ結局地図はなく、道の確認だけした。「最後の二キロがきついよ」とおばあちゃんジェスチャーつきで説明してくれた。
意外とおいしかった食堂をあとにして、腹くちいが出発。走りはじめてすでに乳酸たまっているのに気付く。時差ぼけもあるのか注意力散漫になってなんにもないとこで、とまりかけて、つんのめって転ぶ。胸から道路につっこむ。これは思ったほど走れないぞ、とこのとき気付く。一日十キロがやっとかも。途中、二人組の歩きの巡礼さんを追い抜く。そのうち前方の山のてっぺんにヴェズレーの聖堂が見え始める。おばあちゃんの情報通り、たしかに最後ののぼり、きつそうだ。むりせずこまめに休憩入れ、つらいとこは押してあがる。ほぼ一時間でヴェズレー到着。最後の坂で、ロードバイクプロトンとすれ違う。プロトン最後尾は日本人みたいだった。へばった我々にちらっと笑顔向け疾風のごとく通り過ぎていった。やっぱロードがいいなあ。