パリを走る

yokkobukko2010-08-12

早朝、例によって目覚める。窓の外のパンテオンは一晩中ライトアップされている。その向こうの空が少しずつ明るくなる。6時くらいにはお掃除車も動き出すし、通勤者も現れる。あとジョガーも。ここはパリの中心地なんだな。朝が早い。

ホテルの朝ごはん。パンとカフェオレとオレンジジュースとドライフルーツ。超シンプル。今日はいくつかのミッションあり。1自転車を借りる。2ベルシー駅の場所を確認し、明日の切符を買う。3双眼鏡(なんと忘れた!)を入手する。4ブルゴーニュの地図を入手する。5Y木さんとこのIちゃんと夕方のお散歩に行く。
自転車が開くのは十時過ぎだから、のんびりホテル付近から歩きはじめる。パンテオンの裏へ、ヘミングウェイが通ったコントレスカルプのカフェを見たい、と思ったが、いつのまにかムフタール通りに入っている。昔ひとりで泊ったホテルを見にいく。下町の商店街だけど、あらためてよく見るとチーズ屋とかラクレット食わせる店とか多い。教会まで歩いて、またセーヌ川のほうへ坂を上り、ローマの闘技場あとを目指すが、どんどん気が散って、結局植物園へ入る。はじめて来た。広いし、砂地だし、芝生歩くと怒られるし、時差ぼけだし、徐々に疲れが。そして意外と寒い。レギンスの下の足が血行の具合で痒くなる。これって寒いとき運動するとなるあれだ。しかし植物園、適度に開放的だし、植物がマニアックですばらしい。植物園出るとオーステルリッツ駅。トイレを借りにいく。有料のきれいなトイレで、ピピおばさんも小さいコンピュータ画面見ている。すごい。
 
ところでヴェリブというパリの貸し自転車のシステムはニュースか新聞で見て知ってたけど、ほんとに乗り場が多い。よく見なかったけど最初に預け金を入れて会員になりカードを手に入れ、あとは20分1ユーロとかそんなんだろう。各所にあるステーション乗り捨てシステムで、連絡の悪い地下鉄使うより慣れたら便利そう。路上に置きっぱなしだが、格好がものすごください。ぜったい盗みたくないどんくさいフォルムだ。こんなんできたらタクシー儲からないだろうな。オランダとかで生まれたシステムらしい。東京でもはやるかもしれない。
とはいえ、パリは自転車道路が充実している。オーステルリッツでヴェリブ発行の自転車地図を買って、また歩きはじめる。
ブルゴーニュ方面へのter地方電車の発着するベルシー駅、地球の歩き方の地図には乗ってるのに、どういう駅だかの案内はどこにもない。ネットで最新の時刻表調べたからここから出るのは確かだけど、とにかく場所をちゃんと確認したい。オーステルリッツからぽくぽく30分くらい歩く。途中メガネ屋で少し緩いサングラスの竿の調整を頼んだら、まっすぐだった竿をぐいっと曲げられてしまった。なんかカッコ悪くなったが、「タダでいいわよ」とか親切な笑顔で返され、なにも言えない。
ベルシー駅発見。ちゃんとあるじゃんよー。チケット売り場で自転車を乗せる予約もする。おねーちゃんは有料だと言い張るが、時刻表にはタダとあるのにな。しかもチケットにも追加料金の書き込みなく、不思議。ミッションひとつ達成。次は自転車。
リシャール・ルノワール駅で降り、自転車屋へ。グーグルのストリートビューでシミュレーションしたから、はじめて歩く気がしない。すごい時代になったもんです。ここを曲がると看板が、と思いつつ、曲がるとそこにちゃんと看板が。小さい町の自転車屋なのになー。心配していた交渉もすんなり。インド系のお店のお兄さんの仏語がとてもゆっくりで聴きやすい。ネットで予約していたランドナーっぽいクロスバイクも用意されてたけど、明らかに二台ともサイズが大きいので、隣にかかっていたジャイアントのマウンテンバイク(VTT)に。うしろに荷物が積めないが、リュックでいいだろう。それにヘルメットとライト、空気入れと替えのチューブを5日予定で借りて50くらい。これに保証金が一台現金で250。「これ(500ユーロ)は月曜日にお返しします」と目の前できちんと封をしてしまってくれる。気持ちのいい自転車屋さんだ。では。
昼食はすぐ近くのクスクス。
ロッコ風ですかとうっかり聴いたら、クスクスはアルジェリアが本家だみたいな話に、そしてそのまま歴史の話に。おいしいお店でした。今度剣道部の日本人が十人くらい来るとか言ってました。
パリを試走。せっかくなのでこのままサンマルタン運河を北上、アメリアメリだ言いながら走るが、実際は少し前の外堀に似ている。水が真緑なの。ヴィレットのシネコンまで走って、映画専門本屋を見て、運河沿いの公園で休憩。
次は小説の舞台を目指す。ブルソー通りとバティニョール通りが交差する鉄道の谷へ。外周の大通りをひたすら走る。バルベス付近からピガールまでの混沌とした人ごみはすごかった。アラブのひとびとと観光客、雑貨店タチのあたりが特に。自転車道路のマークは完全に人ごみの下。サクレクールも横目で通過。ムーランルージュはじめて見た。いかがわしい感じだ。真昼間のいかがわしい街を自転車で走りぬける。
ブルソー通りに着き、おおおと深い線路の谷を見下ろす。トンネルはもうないけど、感慨深い。

ふと時計見ると四時近い。Y木さんちのIちゃんのお散歩に参加したいが、場所はパリの反対側だ。とりあえず中間地点のホテル目指して走る。途中、コンコルド広場でツールドフランスごっこ、というか、おおお、これが〜と最終ステージに思い馳せ感無量。
自転車でホテル帰り、置き場所の交渉をする。受付のマダムは最初かなり面喰っていたが、なんとか地下の会議室に置いてくれることになる。大急ぎで自転車とばし、ダンフェールロシュローへ。ばたばたしてカメラ忘れる。
公園でまったりするIちゃんと再会。このあいだ会ったばっかだけど、大きくなっている。お座りもできるし、ずりばいもできる。貞子。双眼鏡と地図を手に入れるため、いったんY木さんと別れ、とりあえず双眼鏡を付近でやみくもに探すが、どこで売っているのか分からない。日本だとカメラ屋さんだけど。結局うろうろ一時間くらいさまよううちパニックに。こののち酒を飲むかもしれないので、いったんホテルに自転車置きに戻る。なぜか今日にかぎってエレベーター工事。自転車地下におろすのに、らせん階段使うはめに。重かった。ホテルの受付のスマートな格好のお兄さんにも力仕事をさせてしまったが、いやな顔ひとつしない。「ぜったい外に放置しないほうがいいから、これでよかった」とこちらの心配をしてくれる。プロだなあ。
ふたたびY木家へ。はじめてRER。この段階で七時過ぎて、本屋も閉店。双眼鏡も買えなかった。あとになって思うが、双眼鏡よりまず絶対地図を買うべきだった。このへんが一番の判断ミス。すこしイライラしてしまった。
いつも思うがY木家の空気は温かい。Iちゃんが登場してますます。Gがすっかりパパになっていた。Iちゃんと遊ぶうち、イライラもどこかへ。おいしい夕飯ごちそうになる。

Gに羊焼いてもらった。おいしかったです。あと意外だったのはGが自転車に詳しいこと。今年のツール話で盛り上がる。やっぱりヒーローはフィニヨンというGは、やはりアンディ派で、コンタはどうもドーピングが怪しいとか言っていた。ワインもいただいて、夜遅くになってお暇する。明日はいよいよ自転車で出発。
なんとブタを忘れる。やむなくブタはフランス家庭でホームステイすることに。