籠る

箱根駅伝往路。山登り今年も盛り上がる。体調悪く、昼寝。外は凍るような雨。ストーブの前で、ちんちん言いそうなやかん見ていると、なぜか母親に外へ行けとそれとなく、しかし執拗に促される。外はもう夕闇にとりまかれているのに!靴を履くはめに。幸い雨はやみそう。母が懐中電灯を持っていけと言うので笑った。外出て思ったが、たしかにこの町は暗い。街灯が極端に少ないのと、まっくらな家屋が多いんだ。人がいないのか、びっちりと雨戸を閉めているのか。まずうちの前に広がる市営住宅にかぎっていえば、半分くらい、もしかすると三分の二は空き家かもしれない。まだ六時前だというのに、夜更けか未明の、眠る町を歩いているようだ。すぐに逃げ帰れる距離に家があるからでかけられるが、知らない町だったら試練だ。
あとで気付いたけど、去年の二日も、黄昏時にこうやってこの町を歩いた。ぎゅうっと高台にせりだしたガードレールから、小さいお椀のような町を見渡した。そして去年もお椀の底で、湿っけた夕闇に明るくともるしまむらを見て、ひとの気配にほっとした。しかしこの町の夜の、このもったり感はなんだろう。よそからやってきたBはなにを感じるのだろう。不安とかないのか。