雲見から松崎、堂ヶ島へ

yokkobukko2009-05-05

また早朝目が覚める。しかしよく寝た。十時間以上寝ている。ひょっとすると湯あたりしているのかもしれない。が懲りもせず朝風呂。二度ねせず、散歩。いまにも降り出しそうな空模様。白い白い空ながら、うっすら富士山現る。かすみの向こうから徐々に稜線が現れ、また消えていく。やがて雨。宿の蛇の目傘さして、水門の先っちょにすわって甘夏食べる。すっかり冷え、また風呂。朝餉。昨夜出た伊勢海老の殻の味噌汁豪華。おばあさんのつけた蕪のつけものが旨い。コーヒー飲んでトイレ行って出立。いい宿でした。お世話になりましたと、おかみさんと娘さんに挨拶。忘れ傘を一本いただく。
松崎へ。観光協会で宿でもらった領収書でくじひく。商品券1200円分と長八記念館と美術館のチケットもらう。長八というのは、つげ義春の「長八の宿」に出てくるあの長八である。こて絵というのはどこかロマネスクに通じるものある。左官屋さんの職人芸だ。とはいえ長八さんは近代、19世紀のひと。美術館は観光バスの休憩地みたいな、いただけない雰囲気だ。記念館は、長八のこて絵がそのまま保存されているお寺で、しっくりとはまっていてよかった。ガイドの女性もテント芝居の女優くずれみたいで味があった。松崎の町を歩く。昼飯後、少し海をみて、タクシーで沢田公園露天風呂へ移動。ここは前から来てみたかった憧れの共同露天風呂だけど、すたれているのかな? 誰もいない。海にむかってむくむくせりあがるカッパドキアにあるような岩盤の上にほったて小屋が立っている。手前の駐車場で湯守のおじさんに湯代5百円を払う。いちおう男女別。一畳強の小さい湯船。湯はぬるい。堂ヶ島が見える。遊覧船がいちいち近づいてくるからこのあたりの奇岩も見所のひとつなのかも。海は全体に白いが、水平線あたりがくすんだ青色なので、すこしそりあがってみえる。くもりの海ってなんかいいよな。あんまり温いんで長居をしました。最後までわたしたちふたりしか客はいなかった。
あがってから男湯ものぞく。 
そこから堂ヶ島まで歩く。堂ヶ島というと井上靖の夏草冬濤。洪作たちのきらきらした夏の日々がほんとにまぶしかった。当時からそうなのかもしれないが、遊覧船の桟橋あたりはめちゃくちゃ俗世なのだった。波が岩盤をえぐって洞窟があちこちにできている。そこに日が当たると青緑に光るようだ。
今日のような曇天でもやはり美しい。

堂ヶ島からは特急バスで三島へ。帰りのこだまにもそう混雑はなく、無事旅を終える。