行く人とは

yokkobukko2009-02-10

「行人」読みおえて少し日が経った(「こころ」をつづけて読みはじめたが、気分は「行人」にとどまったままで、いまのところはいいかんじで話が混じってきている)。最初、エゴイストの話かと思ったがちがった。
おわりに、兄さんというひとがどういうふうに不幸であるか、また幸せになりうるのか、その方法はなにか、と、その友人が考察を展開する。兄さんの不幸というのは、自分は平和で単純なものを愛する、しかし自分が関与すると、相手は屈託を持つようになる、自分が相手の美点を全部だめにする、自分以外の人間と関わるならまだどうだかはわからぬが、少なくとも自分が相手になると、つまらぬ人間になりさがる、というもの。このメカニズムでいくと、兄さんはぜったい幸せにはなれない。
この兄さんにすれば、自分はもう、いっぱいいっぱいで他者に関与してるわけで、この閉塞した状況を打破するには、相手の真摯なリアクションを期待するほかない。ここでいうなら、嫂、弟、妹、父母が、彼を疎外するのをやめ、自発的に彼に関与していくことなんだろう。この際ネガティブな関与でもかまわない。なんでわたしが?いやだ!というのなら、つまり、愛せない、というのなら、兄さんに救いはない。
愛されないと生きられないのは、世界との関係に自分を置いているからだろう。愛されなくても生きていきなさいと、彼に無為に生きることを強要する周囲の人間のほうが、むしろエゴイストのように思える。

ほころびをたくさん含んだ、ぐしゃぐしゃとした見解、とりあえずはまま。