ヨハネ18曲目

釈放するならバラバを!というところ。イエスに肩入れしている読者(観客)にすれば、無辜のものが同胞によって不当な死へと追いやられていくやるせない場面。K先生曰く「わたしにとっては物語のなかでいちばん嫌いな場面だけれど、曲は美しいの。ここは弱々しくならないように、ワルに徹して歌ってください」。コーラスっていろんな役になるんだよな。おもしろい。
福音書で粗筋だけ追ってたときは、このあたりの場面にあるのはあのしばしばリンチを引き起こす(ひとたび発動すると誰にも制御のできない)集団的興奮だろうと思ってたのだけど、実際、バッハの解釈を歌ってみて感じるのは、この集団がきわめて冷静で狡猾だってことなんだよな。うーん、「狡猾」はちょっと違うかな。合理主義というのかな。そして、ぶるんぶるんって、たるみかけた物語のエンジンを噴かしてもいる。
今日もアルト少なかった。このところずっと二人だったり三人だったり、ソプラノは二十人くらいいるのに、バランス悪いです。モーツァルトに比べて、バッハのアルトは存在感あるし、おいしいのにな。
練習後、先生と残った何人かでお茶をする。先生が、聖書における残酷な描写の理由を問うたことから、話はひたすら逸れてった。そしてありがちな文明衝突論へと陥り、最終的に世界平和は永久に訪れない、という袋小路へ至った。みなで溜め息。うーん、やっぱ、聖書を史実として捉える観点でのみ話を進めると、世界情勢の話になっちゃうんだよな。文学的な見方をすると、豊かでおもしろいとおもうんだけど。まあ、いっか。