荒井良二展

ひさしぶりにソーダ気分

その展覧会のことは、先週世田谷美術館でもらったチラシで知った。二週連続都内ドライブ。世田谷文学館へ。いい展覧会だった。荒井良二の絵はもともと好きだったけど、人まで好きになってしまった気がする。展覧会で流されていた、アストリッド・リンドグレーン記念文学賞受賞に際してのスウェーデンの旅フィルムが思いがけずすてきだった。どっかの田舎の年に一度のお祭りくらいのおめかし度なんだな、その授賞式は。緑の草原にぽこんとつくられた舞台の上にはこどもコーラス、チェロ奏者がひとり、キーボーディストがひとり。司会進行の上品なおばちゃんと、プレゼンテーターの皇女さまも上等な普段着。童話ですよ、童話!アストリッド某というひとのことは、まったく知らないが、そのひとがその国でどんなふうに尊敬されて、どんなふうに愛されているかは、その名のついた授賞式を見ればよくわかる。受賞者にあわせてデザインされた賞状もすてきだった。その受賞の席で、自作の歌をアストリッドに捧げうたった荒井さんも、実に実に胆の据わったひとだ。それを聴いて涙を拭うギャラリーもいた。なんというか、わたしは感動しましたよ。誰かの名前のついた賞というのは、こんなふうであるのが理想じゃないかと。
フィルムには、荒井さんが彼女のお墓まいりにいくシーンがある。漬物石みたいな石がぺたっとした顔を表に出しただけのお墓に下草が蔓延り、陽だまりがおちている。ものものしく花束に埋まるでもなく、放ったらかしにされて荒んでいるでもなく。そういう墓のありかたがまたよかった。余計がない。ほんとにそっとされている。そっと愛されている。