焼肉のために

念のため、この旅の目的はシロス、ロマネスクであり、グレゴリオ聖歌です。
たぶん見すぎたのだ。
夜明け前から毛布をかぶり窓辺にはりついて、ものどもが石に戻るのをずうっと見ていた。だんだん尖塔の構造もわかってくる。まずは基本的なナルテックス上部のふたつの鐘楼と、トランセプト交差部塔。それから両翼上にひとつずつ、そしてアプシス、小アプシスの上にそれぞれ尖塔が立っている。ほか柱という柱、天頂を目指すもののてっぺんがそれぞれみな小尖塔になっているというわけだ。うぎゃあ、いろいろいるなあ、ものどもが・・・
石の美術が好きなのは、動いていた時が止まってしまった、場が場ごと凍結してしまった感が、強烈だからだ。石化して、思いがけずその場に封じ込まれたものたち。途中のものは途中のままに。挙げられたナイフは挙げられたままに。発せられた声さえも宙に浮いたままだ。永遠に。その窮屈さにすごく惹かれる。
だからもともと永遠の存在である天使やギリシャの神々の像には、あまり興味がわかない。聖人はというと、ひとによる。モワサックのエレミアはすごく好き。
だから、見すぎたんだと思う。
虜になっている。
明日は飛行機だし、もうシロスでお腹いっぱいだし、ほんとうは午前中のバスで早々にもマドリッドに戻るつもりだった・・・・のに、だらだら、だらだら、まだ窓辺にいる。

どうせだもん、昨日、聖堂の向こう側で見かけた焼肉を食べて帰ろうよ。
結局、それかい!?
広場の本屋も気になるし。
ということで、バスは夕方のに乗ることにして、半日たっぷりとブルゴスを楽しむことにする。
日曜とはまるでちがう顔の活気あふれるバル通りで、かたつむりに遭遇。
    ・・・Zoo?

さて広場の本屋というのが、意外にも素晴らしい本屋だった。正確には本屋ではなく、半分はレガロ(贈り物)のお店、半分は日本ではなかなかお目にかかれない、そして手に取るなんてそう簡単にはできない中世写本のファクシミリ版のショールーム。バイト君か、バカ息子か、店番の眼鏡の兄ちゃんが、本好きなうえにわりと気安いひとで、中世の本が好きならと、これが可笑しい、あれが可笑しいといろんな本を見せてくれる。そしてそのままひとりで本をめくって、ひい〜っとか言って笑っている。このひとも・・・・お仲間? わたしはわたしで、うぎゃ〜とか半狂乱になりながら、そこにあるファクシミリ版をそおっと(半狂乱でも)めくる。こんなに薄ぺらい材質だったんだなあ。なんかちょっと幻滅。ちなみにお値段はというと、まあものによっていろいろだが、わたしの欲しいのは6千ユーロだった。「・・・っは!」と兄ちゃんの背中を叩く。「いやまじで」と兄ちゃん。たしかに前にネットで調べたときもそんくらいだったが。っちっ!
しかたないので印刷されたふつうの本を買う。それでも大満足なのだった。あるとこには、いっぱいあるんだなあ。もう、ものすごく幸せなのでした。
 そしていよいよ焼肉です!
念のため朝、顔を出して予約入れときました 
  そしたら特等席。窓からは大聖堂。
やはり憑かれてますかな。 
 ちょっと高そうか?というシックな内装 
  のわりに野性的なお料理
Bちゃんは本日の定食、カステージャ風スープ、サラダ、メインは子羊の竈焼き。わたしは単品でピーマン焼きとラムチョップの竈焼き。定食にはワインがつく。グラスかと思ったらボトルごと出てくる、グラスもふたつ。いくらでも飲んでいいの? わたしも? また注文しまちがえた? よくわからんが、美味しいのでひとり二杯ずつ飲む。しかし勘定は変わらんかった。どゆこと? 
 食後酒と甘い菓子もサービス 
  こんなにかわいいのに・・・・おいしいなんて