さよならのまえに

四日目のはじまりの前にいくつか。

宿のお姐さんとスタッフ。この「三つの王冠」という名の宿。二月ほどまえホームページをみて即メールした。
―去年のスペイン旅行、宿という宿にメールをしても返事が来ず、もしかして英語じゃだめかとスペイン語をにわか勉強してメールしても返事が来ず、もしかしてファックスかと実行したところ、ふたつの宿から返事がきて、ひとつはきったない字で「満室」とだけ書いてあり、もうひとつもだめ。結局忘れたころに一軒のホテルからようやくよい返事が帰ってきたのだった―
というトラウマがあって、今年もだめもとでシロスのホテルふたつに同時に申し込みメールを送ったところ、双方から即座に予約完了メールが届いた。おお、この一年でなにがあった?スペイン?とひどく驚いた。必要ないのでひとつはすぐにキャンセルしたが、ご丁寧にもキャンセル確認メールまで届いた!その後、旅行の日程自体が3日ずつ後ろにズレるちょっと難しい事態(わたしのスペイン語力にとって)も起こったが、「三つの王冠」のレセプション嬢はこれにも実にスマートに対応してくれたのだった。いったいどんなひとかな、となんとなく楽しみにしていたが、蛍光赤ピンクの髪を真ん中分けにした、しゃきっとかっこいい女性だった。声もハスキー。テキパキよく働くひとで、あるときはレセプショニスト、あるときはマネージャー、あるときはレストランの給仕としてひとの注文に「完璧!」などとウィンクしてよこし、あるときは厨房でわっしわっしあのでかくて丸いパンを切り、あるときは座敷童のような我が子らにびしっとしつけをかます。どういうあれでここを継いだのかは知らないが、都会でもびしっとやってけそうなひとだ。あとは、このひとの旦那さんだろうか週末にだけレセプションにいた男性、厨房を取り仕切るおじさん、掃除もすれば会計もし子ブタにバター塗って塩ふって竈につっこみまでする使えるおばさんたち二人。5人ともすごく勤勉で実直なひとびとだったな。
  真ん中が我々の部屋
 この立派な竈で子ブタ丸焼きされていた 何匹も