旅日記番外編/いくつかの会話

yokkobukko2008-08-25

ブルゴスのホテル、朝の食堂、テーブルいっぱいあるのに、わざわざ隣にやってくる熟年夫婦が、ちらりちらり、こちらに話したそうに視線をよこす・・・給仕のおばちゃんとの会話でフランス人なのはわかっていたから、嬉しくてこちらから話しかける。やはり日本好きのひとびとだった。日本旅行で食べた「神戸ビーフ」が忘れられないとか言う。すごいな神戸ビーフ。仏語、やっぱラクだわ〜と最初は嬉しかったが、しばらく世間話をするうちに、この会話をどう終わればいいのか、わたしはいつパンを食べるのか・・・こんなん考えるのって日本人だけだよ、いや、もしかするとわたしだけか? と徐々に、落ちていく。ではよい旅を、なんて無難に締めたものの、もう、だめ。完全ダウナー。仏語っていっつもそうなんだけど、最後には落胆が待っている。ちょっとした言い間違いや、聞き間違いもくよくよのもと。Bちゃんはというと、いつものこと、と憐憫のまなざしをくれるのだった。
お昼のポプラ並木。長ーいベンチでひとり日向ぼっこをしていたおじいさん。日だまりをもとめて隣に坐る際、目が合って、あいさつすると、ふつーに話しかけてくる。中国人かね、日本人かね? あ、日本人です。 おじさんのおうちはこの近くですか?(←初級スペイン語会話) はっはー、目の前さ。それさ、それ、と正面の建物を指さす。ええ、いいなあ、ここすてきなとこですね・・・こののち、ぽつり、ぽつり、と会話が続くのだが、わからないなりに楽しかったな。どうせ初心者という開き直りがいいのか、温かいひとだったからか。

ありがちな話だとは思うけど・・・ 

それにしても、よく話しかけられる旅だったな。興味を持って話しかけられるのってなんか嬉しいものなんだな。外国だと特に。

そういえばシロスの教会でも話しかけられたんだった。聖母被昇天祭のミサのあと。「日本人ですか?」と声をかけられた。日本語だったからなおさら驚いた。振り向くと中年のスペイン人女性が立っている。主人の仕事の関係で昔日本に、それも東京の府中に住んでいたのだと、しっかりとした日本語で言う。ひさびさに日本語を使えて、すごく嬉しそうだ。「東京はどこからですか?」「どうやってここへきましたか?」「これが(グレゴリオ聖歌)好きですか?」と質問攻め。久しぶりだからか、ときどき日本語は崩壊するんだけど、話したいんだ、という気持ちが伝わってくる。出口で奥さんを待っていたニュージーランド人のご主人は彼女とは対照的にすごくシャイだった。まだ小さな娘さんも。こちらもなかば照れながら「こんにちは」と日本語で、(思わず)お辞儀。むこうもお辞儀。ここ、スペインの片田舎の教会の戸口だよね、と、なにか可笑しかった。
うん、それこそ通りすがりの会話だけど、あれは楽しかった。Bもそうだと思う。あの女性のあの、日本語を話すときの誇らしげな、そしていかにも嬉しそうな様子を思い出すと、やっぱ語学、がんばろという気になる。